「親の背を見て子は育つ」とか「子は親を映す鏡」とも言われるように、子どもは親がすることを学び、吸収します。
子どものコミュニケーション能力を伸ばしたいと願うなら、私たちがまず親として子どもとどのようなコミュニケーションをとっているかを見つめ直す必要があります。
本サイトの記事では、子どものコミュニケーション能力を伸ばすために、親としてできることについてお伝えします。
簡単に言えば、子どもの「聴いてほしい」という欲求を何よりも優先して満たしてあげることです。
そうすれば、子どものコミュニケーション能力は、すくすくと成長するでしょう。
1.子どもの「聴いてほしい」欲求に応える
子どもは本来、親にいろいろと話したがるものです。
友達とのやりとりや学校での出来事など、話したいことがたくさんあります。
ただ、困るのは私たちが何か作業をしている最中に話しかけてくることです。
あなたが母親であれば、食事の支度をしている最中かもしれません。
そんなときに「ねえねえ、聞いて」と子どもから話しかけられたら、「今は忙しいの。ママはご飯をつくっている最中だから、ちょっと待ってて」などと、さえぎってしまいがち。
ところが子どもは「今、この瞬間」に話したくてたまらないのです。
そして「この瞬間」は二度と訪れず、取り返しがつきません。
後で聞こうと思っても、子どもは「もういい」「忘れた」などと返事をします。
せっかくの親子のふれ合いを永久に失ってしまうのです。
ですから、子どもが「聴いてほしい」というメッセージを発したなら、手を止め、作業を中断して「なあに?」と聴いてあげる必要があります。
もちろん膝をかがめ、子どもの目線に合わせることを忘れてはなりません。
NPO法人親子コミュニケーションラボ主宰の天野ひかりさんは、著書『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)の中で「親のタイミングで聞こうとすればするほど、子どもは話さなくなります」「子どもが話したいタイミングが訪れたら、それを見逃さず、聴こうとする姿勢を忘れないで」と書いています。
子どもが話したいときと、親が聴きたいときのタイミングは必ずしも一致するわけではありません。
むしろ一致しない方が多いでしょう。
だからこそ、子どもが「聴いてほしい」と訴えかけるその瞬間を見逃すわけにはいきません。
「ねえ、ママ」と子どもが話しかけてきたなら、子どもの表情も見ずに「忙しいから後でね」などと言い放つのではなく、何を差し置いてもまず子どもの話に関心を向けたいものです。
子は親のコミュニケーションを受け継ぐ
記者をしていた当時、私が一緒に働いていた女性事務員は、性格にやや問題を抱えていました。
私が話しかけなければ話さないので、オープンな自己開示を希望したのですが、逆ギレされました。
それ以来、私は必要最小限の当たり障りのない会話に終始することにしたのですが、「聴く」ことを専門とする記者でしたので、少しだけプライベートな話を引き出すのに成功したことがあります。
彼女は、すでに亡くなった鬼のような祖母の話をしてくれました。
何でも勝手に孫(つまり事務員)のおもちゃを処分してしまったそうです。
大事にしていたモンチッチというサルの人形をある日、幼稚園から帰ってきたら捨てられていたとのこと。彼女は大泣きしたそうです。
それ以外にも、勝手に私物を処分されたことが頻繁にあり、弟と一緒に泣いていたということでした。
「捨てないで」と孫が泣いて哀願しても、容赦なく捨てる祖母。
聞く耳をもたなかった祖母の態度が異様すぎて、私には理解できません。
また、父親の話もしてくれました。
高校時代に付き合う彼氏ができたら、1ヵ月間、全く口を利いてくれなくなったそうです。
相手の彼氏を快く思っていなかったのかもしれませんが、娘に1ヵ月間も話しかけなかったという父親の態度は異様です。
まるで娘に無言の罰を与えているかのようです。
ちなみにいまだに実家暮らしの事務員は、40歳を過ぎても独身でした。
高校時代に父親から受けた仕打ちが、災いしているように思えてなりません。
聞く耳を持たない祖母や、無言の罰で娘を苦しめる父親。
どちらもコミュニケーションとしては難ありです。
だからでしょうか。事務員は私の言うことには聞く耳を持ちませんでしたし、要望しても逆ギレする始末。
同じ事務所にいても、無言の時間だけが流れていました。
このように子どもがとるコミュニケーションのパターンは、親のコミュニケーションのパターンを色濃く受け継ぎます。
2.まとめ
親が何を差し置いてもまず子どもの話に耳を傾けるなら、子どもは思う存分しゃべり続けます。
そして十分に満たされます。十分に満たされた子どもは、静かになります。
「構ってほしい」と言って、しつこく親を邪魔することはありません。
逆に「今、忙しい。後で」などと言って子どもの口を封じるなら、のちのち大きなしっぺ返しを食らうでしょう。
子どもが大きくなったとき、親の言うことを聴かなくなるからです。
コミュニケーションの欲求が満たされなかった子どもは、大きくなってから他者とのコミュニケーションを満足させることができません。
子どものコミュニケーション能力を伸ばすには、まず親が手本として子どもの「聴いてほしい」という欲求に応えることが大事です。
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