あなたは陰でコソコソと他人の悪口を言う同僚を見て、どう思われますか。
その同僚と関係を壊したくないと思えば、悪口に同調するかもしれません。
はっきりと「陰口はやめなよ」と注意できる人は少ないものです。
私などもあいまいに同調し、表面的には共感の姿勢を示していました。
けれども陰口は、間違いなく良好な人間関係をむしばみます。
ゆっくりと真綿で首を絞めるようにして、私たちを不幸におとしいれるのです。
幸せな人間関係を築きたいのなら、陰口の反対を行うしかありません。
すなわち「陰褒め(かげぼめ)」です。
陰褒めとは、本人がいないところで堂々と、その人の優れた点や長所を口に出して評価することをいいます。
陰口を言い続ける人は、裏表のある要注意人物としてマークされます。
一方、陰褒めを心がける人は、信頼に足る人物として衆目を集めます。
確実に裏表のない人物に変わるには、陰口を捨てて、陰褒めを取り入れる以外にありません。
陰褒めとは何か
知る人ぞ知る鴨頭嘉人氏(かもがしら・よしひと)氏。
今やYouTube講演家として不動の地位を確立し、チャンネル登録者数 446,207人(2019年5月25日現在)を誇ります。
その鴨頭嘉人氏が、「陰褒め」の提唱者です。
YouTubeにある鴨頭氏の説明には「映像は1日60000時間以上再生され、総再生回数は5000万回を超す」とあります。現在も記録を更新中でしょう。
その鴨頭氏は、日本マクドナルドの店長だったとき、スーパーバイザーのイチノベさんと出会います。
イチノベさんは当時、200人いるスーパーバイザーのトップに立つ人物でした。
赴任した地域では、必ず店の売上等を「日本一」にするというとんでもないカリスマ・スーパーバイザーでした。
このイチノベさんが「陰褒め」の天才だったと鴨頭氏は伝えています。
※動画は、ちょうどイチノベさんの話題(4:25)から再生されます。
陰褒めとは、本人がいないところで、その人ならではの優れた特徴や長所を第三者に伝えることを指します。
陰口が、本人のいないところで、その人を中傷するのに対し、陰褒めは本人のいないところで、その人の人徳や評価を積極的に高めます。
陰口は、意図的に人をおとしめようとするときに有効です。
一方で陰褒めは、意図せずしてあなたの評価を高めるばかりか、聞く人を幸せな気分にさせます。
陰褒めが、第三者を通じて褒めた人に伝われば、褒められた人は気分が良くなります。
もしあなたの上司が、あなたのことを「あいつは仕事熱心でデキル奴だ。絶対にあいつは伸びる」と言っていたとしたらどうでしょう。
しかもその話を、あなたは同僚から聞きました。
「そういえば、この間、A社長があなたのことを『あいつは仕事熱心でデキル奴だ。絶対にあいつは伸びる』って言っていたよ」といった具合にです。
あなたは気分が高揚し、社長の心意気に感動するとともに、がぜん、意欲が増すに違いありません。
ただし陰褒めには、鴨頭氏が言うように注意点があります。
部下のAさんを褒めようと思ったら、部下のBさんに向かって「Aさんに『Aさんは仕事熱心で、絶対に伸びる人材だ』と私が言っていたことを伝えてね」と言ってはなりません。
聞いた部下のAさんは、誉め言葉の裏に、人を操ろうとする作為的な意図を感じるからです。
陰口が親子関係に与える影響は、決して無視できません。
例えば子どもの前で、父親がいないときに、父親の悪口を言う母親は最悪です。
父親の悪口を聞かされた子どもは、間違いなく父親をバカにし始めます。
子どもも、父親を尊敬できなくなるという意味で、間違いなく不幸な状態です。
一方、陰褒めが親子関係に与える好影響もあります。
鴨頭氏は、動画でご自身の奥様の例を紹介しています。
鴨頭氏の奥様は「 父ちゃんすごいよね。頑張ってるよね。ほかの人のためにあれだけ熱くなれる人はいないよね」などと子どもたちに伝えているそうです。
仕事のために家庭を顧みず、一週間に1回しか帰ってこないこともある夫。
そのように仕事に明け暮れる夫がいたら、世の奥方の多くは夫を非難するはずです。
ところが、鴨頭氏の奥様は違います。
「父ちゃんすごいよね。頑張ってるよね。ほかの人のためにあれだけ熱くなれる人はいないよね」と子どもたちの前で、そこにいない父親を高く評価したのです。
当時、鴨頭氏には、中学3年生のお嬢様がいました。
思春期を迎えた娘といえば、異性である父親を意識し、反抗期に入っていようものなら父親を鬱陶しく感じるもの。
それなのに、鴨頭氏のお嬢様は、父親と食事に行きたがったそうです。
仲の良い友達と遊ぶ予定があっても、父親と一緒にいる時間を優先させたのです。
母親から「陰褒め」を聞いていたので、お嬢様が父親である鴨頭氏を尊敬できていたと言えます。
陰口がもたらす弊害
職場の営業部署に転職してきたタヤマさん(仮名)に、前職を辞めた理由を聞きました。
建築設計会社に勤めていたタヤマさんは、わずか3~4か月で仕事を辞めたとのこと。
理由は、二人の上司の悪口に耐えられなかったからだそうです。
同行で営業に行くとき、必ずどちらかの上司と一緒になります。
すると、上司Aはそこにいない上司Bの悪口を車の中でしゃべります。
つぎに上司Bと営業に行くと、上司Bはそこにいない上司Aの悪口を車の中でしゃべります。
両方の上司の悪口を聞かされるタヤマさんは、たまったものではなりません。
その会社に見切りをつけ、転職を決意したとのことでした。
上司たちが互いに悪口を言い合う会社に、将来性を感じられなかったようです。
タヤマさんは入社後、同僚ノダオさん(仮名)とすぐに打ち解けました。
二人はタバコを吸うので、喫煙場所でよく雑談します。
私が通りかかると、二人はそこにいない年上の同僚ツルさん(仮名)について陰口をたたいていました。
ツルさんは、スターウォーズに出てくるジェダイ・マスターの「ヨーダ」にそっくりな人です。
ノダオさんは「ヨーダはダメだよな。使えないよ。仕事は遅いし、能力も低いし」と話しています。
タヤマさんも「そうそう、本当にヨーダは頑固だね。すぐにシラを切るし、よくあれでこの仕事が務まるな」などと応じます。
4~5回、そういった会話を交わす場面に出くわしました。
つまり、いつもそこにいないツルさんの「悪口」を言っているのでしょう。
ツルさんを評価する言葉は、聞こえてきませんでした。
私が愕然とさせられたのは、陰口に嫌気を差していたはずのタヤマさんが、平然と陰口をたたいていたからです。
そのうち、二人はツルさんを無視するようになります。
営業所長から伝えられたことをツルさんには告げず、二人だけで営業先に出かけることもありました。
そのようなとき、営業所長から電話がかかってきたツルさんは、「えっ、知りませんでした。そうなんですか。タヤマとノダオはすでに営業先に行っているのですか」と動揺しています。
電話を切るなり、ツルさんは「あの二人、何も告げずに行ったのか」と悪意ある仕打ちに怒りで唇を震わせていました。
陰口は、社内の雰囲気を悪くします。
チームとしての一体感を醸成するどころか、分裂を招きます。
ツルさんは、タヤマさんが入社してから2ヵ月も経たないうちに退職しました。
後日、オダノさんが私に言いました。
「知っていました? あのヨーダ、じゃなくてツルさん。俺らがツルさんのことを『無視していた。だから辞めた』と言うんですよ。本当にびっくりですし、残念です」。
びっくりしたのは、私の方でした。
どうやらタヤマさんとオダノさんには、ツルさんについて陰口をたたいているという意識はなく、故意に無視しているとも思っていなかったようなのです。
陰口に嫌気がさして前職を辞めたはずのタヤマさんでも、ご自身が陰口をたたいていることについては無自覚でした。
二人は「俺たちはツルさんのダメっぷりについて、客観的な評価を下している」と思っていたのでしょうか。
怖いもので、陰口はときに正当化されます。
私たちはどんな場合であっても、他人をくさすような言動は慎みたいものです。
まとめ
私自身は、悲しいサラリーマンのさがで、よく上司の悪口を言っては同僚と意気投合していました。
発言力のない平社員が、権威者である上司を批判することについては許されると思い込んでいたのです。
けれども悪口を言っていることに変わりはありません。
私がしょっちゅう上司とぶつかってきたのは、陰口に原因があるとも言えます。
陰口は、いずれにしろ人を不幸にします。
人間関係にヒビを生じさせます。
陰口を言う人を、裏表のない人だと評価する人はいません。
陰口は、言う人の信用をも知らぬうちに壊します。
百害あって一利なしです。
鴨頭氏は「 もう一生、陰口を言えない口になりましたとさ」と自己暗示をかけるよう勧めています。
※動画は、ちょうど鴨頭氏が「もう一生、陰口を言えない口になりましたとさ」と話す場面(18:28)から再生されます。
陰褒めを心がけたいものです。
そうすれば、チームとしての一体感が生まれ、親子関係は良好なものとなります。
陰口を捨てて、陰褒めを心がける人に、裏表のある人はいません。
陰褒めを心がける人は、人からの信用も厚くなります。
地味ですが、陰褒めを取り入れることによって、あなたは「裏表がなく信用に足る人」と評価されるようになるでしょう。
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