コミュニケーションとは①「批判しないこと」

上司と部下

コミュニケーションとは「批判しないこと」です。

と書いても、多くの人は「はっ?」と疑問を感じるでしょう。

実は「批判しないこと」がコミュニケーションと大きなかかわりを持つのです。

コミュニケーションとは結局のところ、辞書的に解釈すれば「意思・感情・思考・情報などを伝達すること」。

その究極の目的は「人を動かすこと」です。

『人を動かす』(D・カーネギー著、創元社)というロングセラーの本があるので紹介します。

原題は「HOW TO WIN FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE」。

「WIN FRIENDS」「友人を獲得する」「仲間を得る」といった意味で、「INFLUENCE PEOPLE」「人に影響を与える」「人を感化する」「人を動かす」といった意味になります。

著者であるカーネギーはこの本の中で「人を動かす三原則」を説いています。

その一番目の原則が「批判しないこと」です。

そこで、本サイトの記事では「批判しないこと」の意義に着目します。

批判することをやめれば、私たちは恨みを買うことがなくなり、人を理解するよう努めることができます。

1. 人を批判しない

カーネギーは同書で、殺人を重ねた極悪人であっても自分の行動を正当化するといった事例を紹介しています。

例えば、現代のオレオレ詐欺に当てはめてみましょう。

オレオレ詐欺の電話犯罪者は高齢者をだまして金を巻き上げますが、こう言い張るかもしれません。

「俺たちは老人がタンスに貯め込んだ金を、代わりに使ってあげることによって世の中に金を回しているんだ」。

世間では全く通用しない屁理屈ですが、「盗人にも三分(さんぶ)の理(り)」です。

 

ある記事に、高速道路で危険行為を働き、死亡事故を招いた加害者の発言が載っていました。

いわく「注意されてムカついたから」。

注意して(亡くなった)相手が悪いと言わんばかりのふてくされた言い分です。

このようにたとえ全面的に非のある犯罪者であっても、自己正当化を図ります。

犯罪者ほど悪くない一般の人であれば、なおさらです。

ですから、自分の憶測で他人を批判してはいけません。

私たちが誰かを痛烈に批判しようものなら、相手は怒りを煮えたぎらせることでしょう。

批判する代わりに、相手を理解することが先決です。

批判は役に立たない

カーネギーは言います。「他人のあら探しは、なんの役にも立たない。相手は、すぐさま防御体制をしいて、なんとか自分を正当化しようとするだろう。それに、自尊心を傷つけられた相手は、結局、反抗心をおこすことになり、まことに危険である」。

人を批判しても得るものはない、と指摘しています。

また、こうも言っています。

「人を非難するのは、ちょうど天に向かって唾(つば)をするようなもので、必ずわが身にかえってくる。人の過ちをただしたり、人をやっつけたりすると、結局、相手は逆にこちらを恨んで」

「死ぬまで他人に恨まれたい方は、人を辛辣に批評してさえおればよろしい」。

批判すれば、恨みを買うだけだと指摘しています。

その上で、カーネギーはつぎのように勧めます。

人を非難するかわりに、相手を理解するように努めようではないか。どういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。そのほうがよほど得策でもあり、また、面白くもある。そうすれば、同情、寛容、好意も、おのずと生まれ出てくる」。

 

一方、聖書の「ヤコブの手紙」には、つぎのような警告が書かれています。

「憐れみを行わなかった者に対しては、仮借(かしゃく)のない裁きが下される。憐れみは、裁きに打ち勝つ」。天秤

カーネギーの言葉を使えば、「同情、寛容、好意」を示さなかった人に対しては、死後に神から容赦ない裁きが下されるという意味です。

「同情、寛容、好意」を示す方が、批判・非難するよりも価値が勝るということを聖書は教えています。

上司が部下を怒るのは愚かなこと

6年間で部下を4人辞めさせた50代のパワハラ上司は、部下に反感を抱かせる天才でした。

電話で部下を一方的に叱責したあとは、受話器をたたきつけるように置きます。いわゆるガチャ切りです。

また「バカヤロー」と怒鳴って、部屋のドアを乱暴に閉めます。

「部下を怒って文句があるか」と言われそうですが、こうした上司のやり方は肯定できません。

単に怒りの感情をまき散らしているようにしか映らないからです。

責められた方の部下の気持ちをのぞくと、恐らく上司に対する反発心と恨みしかないでしょう。

部下を頭ごなしに怒ることは簡単ですが、部下がどうして怒られるような行動をとったのかについて理解しない限り、部下の改善は望めません。

加賀田セールス学校の加賀田晃氏は、多くの部下を営業のエキスパートに仕立て上げた人物です。

加賀田セールス学校

その加賀田氏は言います。

「怒ることは愚かなこと。ほとんどの場合、効果がない。ほとんどの場合、逆効果。人間は『こうじゃろが、ああじゃろーが、お前、バカか? 何でこんなことしたんか?』と責められると、自分を正当化しようとする。自分で言い訳を考える。内心、自分をかばう。決して素直に相手の忠告を聞かない。それが人間です。正論は役に立たない」。

その代わり加賀田氏は、何かに失敗した部下がいたら失敗の原因を尋ねました。

加賀田氏は言います。「僕は責めない。もちろん怒らない。聞くだけ。『何でこうなったの? 一応教えて』『いや、あのそれが私の不注意で。で、あのそれというのも・・・』。

相手は僕の質問に答えながら反省します。僕はいかんかったと。それでいいじゃん。

『じゃあ、もしも今度同じ場面になったとしよう。同じような相手、同じような状況になったら次回は今回の失敗に懲りてどうしようと思う?』『そのときはああしてこうして・・・』。

一生懸命相手が言います、今後の心構えを。それでいいじゃん」

「私は基本的に怒らない。失敗したとしたら聞くだけ。『何で失敗したのか? じゃあ次回からはどうしたらいいのか?』。聞くだけ。それで十分やん」。

(『加賀田式セールスの全て セールス六法《書き起こしマニュアル》』より)

加賀田氏は、部下を怒鳴り散らすことを得意とする管理職に「怒る目的は何か?」を問います。

怒る目的について、よくよく考えるよう勧めます。

「本当に部下の行動を改善することが目的ですか?」と問いかけます。

残念ながら部下の行動を改善させたいのだったら「怒ること」は逆効果です。

かえって部下を委縮させるだけです。

委縮した部下は、さらにミスを重ねることでしょう。

上司と部下の関係でなくても、人を叱りつける、怒る、批判する、非難することは、愚かです。

相手の反発心や敵対心に火を点けるだけです。

2.まとめ

人を動かすには「批判しないこと」です。

そして、円滑なコミュニケーションを図ろうと思うなら「批判しないこと」が役に立ちます。

人を裁くことは、すなわち天に唾を吐くこと。

人を批判しても、得られるものはありません。

私たちは、批判する代わりに相手を理解するよう努めたいものです。

コミュニケーションとは「批判しないこと」。

ぜひ心に留めてみてください。

 

※カーネギーの「人を動かす」二番目と三番目の原則については、関連記事をご参照ください。

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