コミュニケーションとは②「重要感を満たすこと」

警察官

私たちは例外なく、他人から高く評価されたいと願う存在です。怒った様子

「バカにされたい」と願う人は一人もいません。

人から軽蔑されたり口も利いてもらえなかったりしたら、悩みます。

その悩みは、大げさでもなく胃に穴が開くほどです。

私たちはバカにしてくる人に、どう頑張っても敬愛の念を抱けません。

(すみません。少し感情的になってしまいました・・・)

 

コミュニケーションの究極の目的は「人を動かすこと」と以前書きました。

 

上司と部下

 

ロングセラー本の『人を動かす』(D・カーネギー著、創元社)には、「人を動かす三原則」が記されています。

その二番目の原則が「重要感を持たせる」です。

人を動かすには、その人の重要感を満たしてあげることが効果的です。

本サイトの記事では「重要感を満たすこと」の意義をお伝えします。

心からの敬意で人の重要感を満たすことが、いかに大切かということです。

重要感が満たされた人は、あなたの言うことに喜んで従うようになります。

1.重要感を満たす

コミュニケーションとは何かを突き詰めると、相手の「重要感を満たすこと」と言えますハート

「重要視される満足感を与えること」とも置き換えられます。

「重要視」の反対語は「軽視」です。

人は軽視されたりバカ呼ばわりされたりすることに耐えられません。

もっとつらいのは完全に「無視」されることです。

学校や職場で、友人、同僚、上司などから相手にされなかったり口も利いてもらえなかったりすれば、胃に穴が開くようなストレスを感じるはずです。

いじめで無視された中高生は、そのつらさに耐えられず、みずから死を選ぶことさえあります。

人を不幸のどん底にたたき落とそうと思ったら、相手を無視するのが一番効果的です。

無視された人は、精神的に立ち直れません。

 

だれもが追い求めているのは、人から良く思われたい、好かれたい、必要とされたい、尊敬されたいといった自己の重要感に対する欲求です。

D・カーネギーは著書『人を動かす』の中で、人はみな「偉くなりたいという願望」「重要人物たらんとする欲求」を持っていると指摘しています。

また、「他人に認められることを渇望する気持ち」を持っているとも伝えています。

私たちは他人からの評価や敬意、気遣い、賞賛の言葉などを心底から求める存在です。

「重要視されたい」という欲求は、人間にとって根源的な欲求と言えます。

 

加賀田セールス学校

加賀田セールス学校の加賀田晃氏はつぎのように言います。

「我が子であれ、我が妻であれ、我が後輩であれ、お客様であれ、相手を幸せにしてあげたいと思うなら、相手の重要感を満たしてあげなさい。

相手を重要視してあげなさい。相手を気にかけて、優しくしてあげなさい。ハッピーにしてあげなさい」。

 

一方でこうも言います。

「相手を不幸にしたいんなら簡単。テクニックはいらん。無視しなさい。ほったらかす。

相手にしない。物を言わない。

無視する方はへっちゃらでも、された方はたまらんぞ。夜寝れんぞ」。

その上で加賀田氏はつぎのようにまとめます。

 

「人を無視しなさんな、バカにしなさんな、否定しなさんな、むやみやたらに怒りなさんな。

大事な我が子なら、大事な女房なら、大事な友達なら、大事な後輩なら、もっと重要視してあげなさい。

もっと気遣ってあげなさい。相手の重要感を満たしてあげなさい」。

(『加賀田式セールスの全て セールス六法《書き起こしマニュアル》』より)

 

人を無視したり、バカにしたり、否定したり、むやみやたらに怒ったりすることは、相手の自尊心をいたく傷つける行為です。

自尊心を傷つけられた人は、恐らく「加害者」である相手を一生忘れることはないでしょう。

ひどければ「加害者」に対して恨みを抱くことさえあります。

それくらい人を不幸な気持ちにさせます。

無視したり、バカにしたりすることは、良好なコミュニケーションを壊すのに最適です。

 

ではどうすれば、私たちは相手の「重要感を満たす」ことができるのでしょうか。

加賀田氏が言うように、相手を重要視したり気遣ったりすることも一つでしょう。

前述のカーネギーはつぎのように説きます。

 

「自分の長所、欲求を忘れて、他人の長所を考えようではないか。

そうすれば、お世辞などは全く不要になる。うそでない心からの賞賛を与えよう」。

 

カーネギーはうわべだけのお世辞で、人を持ち上げることは不要だと説いてます。

その代わり相手の長所を正しく評価し、賞賛することを勧めています。

これがカーネギー流の「重要感を満たす」方法、そして「人を動かす」コツになります。

 

私の知るパワハラ上司は、できない部下をののしり、嘲笑し、否定することに長けていました。

部下がミスを犯せば、目ざとく指摘し、罵倒します。

ところが部下が手柄を挙げても「さも当然」と言わんばかり。見て見ぬフリをします。

ですから部下の功績を、正しく評価することがありませんでした。

これでは上司と部下のコミュニケーションが難しくなるのも、無理はありません。

部下が上司を、心から敬うことはないでしょう。

 

パワハラ上司に限らず、相手の良いところをまったく褒めず、逆に欠点ばかりをあげつらう人が、あなたの周りにもいないでしょうか。

他人の欠点を見付けることが得意な私たちですが、カーネギーが勧めるように「他人の長所」を見付けるよう心掛けたいものです。

そうすれば、不自然でない「賞賛」を相手に与えられます。

相手の重要感を満たすことにもつながります。

 

重要感が満たされる例

テニス

あなたが男性なら、部活動やサークル活動で「後輩」がいたはずです。

中には「先輩」のあなたを慕う後輩の女性がいませんでしたか。

あるいは尊敬のまなざしを向けてくる後輩の女性にドキッとしたことはありませんか。

応援する後輩

私はこうした経験があり、後輩の女性をいとおしく感じることがありました。

先輩と後輩の上下関係があると「先輩」というだけで敬意が払われます。

「先輩」として敬意が払われることは、ちょっとした快感です。

重要感が満たされるからでしょう。

重要視されることは、とても気持ちのいいものです。

 

一方で妙になれなれしく、タメ口で先輩を挑発してくるような後輩にはまったく好感が持てませんでした。

私たちは、重要視されないことに不快感を覚えます

 

幼稚園児だったときの甥っ子は、よく私になついてくれました。

甥っ子

私を見付けると、走ってきて抱きついてきます。

甥っ子をかわいいと思ったのは、私のことを「頼れる大人」として重要視してくれたからです。

甥っ子が反抗期を迎え、私を重要視してくれなくなれば、憎たらしくなるかもしれません(笑)。

 

恋愛も一緒です。

お互いに求め合い、お互いに重要視し合うから愛情が深まります。

お互いに重要感を満たし合う関係ができるから、結婚に至ります。

ただし結婚しても、相手の欠点が目に付くようになったら黄色信号です。

トラブルが生じて口論になり、罵り合い、無視し合い、そして離婚に至ります。

 

夫婦喧嘩

 

 

私が以前勤めていた民間会社に、退職校長が営業アドバイザーとして働いていました。

一人は70歳を過ぎても現役でした。

中核市の教育委員会にいた経歴があるので、本来なら口を出すことができない教職員の人事に関して強い発言力を持っていました。

一度決まった人事も「離婚した元夫婦が同じ学校に異動になるのはよくない」と助言し、撤回させたことがあります。通常ではあり得ないことです。

退職校長

当時、こうした話を自慢げに話してくれました。

とっくの昔に退職した元校長でした。

それでも大きな影響力を及ぼせたのです。

70歳を過ぎても働き続けられたのは、重要感が満たされていたからに違いありません。

 

反対のケースもあります。

60代の別の営業アドバイザーは、セールスを目的にある中学校を訪問しました。

帰ってきてから「校長からぞんざいな扱いを受けた」と憤慨していました。

どうやらただの営業マンのくせに、とバカにされたようなのです。

「足もとを見やがって」とかなりご立腹の様子でした。

中学校の校長は、「人生の先輩」が訪れたことを意識すべきでした。

しかも元同業者です。

失礼のないよう最低限の敬意を払う必要があります。

なのに「卑しい物売り」としか見なかったようです。

 

そもそも校長とは学校の最高経営責任者であり、トップリーダーです。

一般的には「エライ人」に当たります。校長

60代の営業アドバイザーは、退職校長とはいえ経験者としてのプライドがありました。

プライドが傷つけられれば、怒り出すのも無理はありません。

その営業アドバイザーは3年半ほどで辞めてしまいました。

人は重要視されないことを不愉快に感じるものです。

 

2.まとめ

コミュニケーションとはすなわち、相手の「重要感を満たすこと」と言っても過言ではありません。

老いも若きも男も女も、みんな自己の重要感が満たされることを望んでいます。

老若男女

相手の重要感を満たすことができなければ、ときに人を怒らせ良好なコミュニケーションを妨げます。

意地悪く人を無視すれば、相手の尊厳を踏みにじることさえできます。

人を軽んじたりけなしたりすることは、コミュニケーションを破壊するだけです。

何も生み出しません。

私たちは、相手に心からの敬意と関心を示したいものです。

「重要視される満足感」を与えられるようになれば、だれとでも良好なコミュニケーションを図ることができます。

重要感を満たされた人は、喜んであなたの言うことに従うようになるでしょう。

 

※カーネギーの「人を動かす」一番目と三番目の原則については、関連記事をご参照ください。

 

上司と部下

 

悩み
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