あなたの兄弟姉妹のだれかが生命保険会社の営業職に就いたとします。
仮に妹が「お兄ちゃん、生命保険の仕事を始めたの。ノルマがあるからガン保険に一つ入って」と頼んできたらどうしますか。
優しいあなたなら義理で入ってあげるかもしれませんね。
「ちゃっかりしてるな」と苦笑いしながらです。
でも妹が「お兄ちゃん、日本人の2人に1人がガンにかかり、3人に1人がガンで死亡しているの。奥さんと子どもを愛しているならガン保険に入ってあげて」とあなた目線で話してきたらどうでしょう。
あなたと家族の将来を案じて保険を薦めてくるのです。
あなたは必要性を感じて、抵抗なく保険に入るでしょう。
営業活動では特に、相手のニーズや相手の利益を優先させたいものです。
自分の幸せより相手の幸福を優先させるのです。
本サイトでは、全米トップ5に入ると言われるマーケティング・コンサルタントのジェイ・エイブラハムが書いた『ハイパワー・マーケティング』(ジャック・メディア)から「卓越の戦略」について紹介します。
ジェイはこう言います。
「卓越の戦略は、実にシンプルだ。
クライアントのニーズを、絶えず、自分のニーズより優先させるだけでいい。
これさえマスターすれば、成功は自然とついてくる」。
ジェイはユダヤ移民の家系です。
その発言には、ユダヤ人の知恵が秘められています。
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1. クライアントが必要としているものを売る
ジェイはクライアントと顧客の意味を別なものと捉えます。
- 顧客(カスタマー)・・・商品やサービスを購入する人
- クライアント・・・他の人の保護下にある人
あなたがビジネスをするとき、相手にただ製品やサービスを売るだけなら、相手は顧客(カスタマー)となります。
一方、相手が本当に必要としているものを理解し、尊重し、相手が最終的に望んでいるものを提供するなら、あなたは信頼できるアドバイザーになります。
つまり、あなたは相手を保護する存在となり、相手はあなたのクライアントになるのです。
ジェイは自社製品に愛着を持ったり、会社の都合を優先させたりするのではなく、クライアントに愛着を持つよう勧めます。
クライアントに惚れ込むように促すのです。
ジェイは言います。
クライアントに惚れ込むとは、すなわち、クライアントの幸福に責任を持つことである。
クライアントの利益をあなたの利益よりも優先させるのだ。
営業職を経験した人なら「どんな売り文句でこの商品を売ろうかな」と悩んだことがあるはずです。
相手を納得させるセールストークが思いつかないからです。
ところがジェイは考えを転換するよう勧めます。
つぎのように自問するのです。
「私はクライアントに何を与えられるか? 私がクライアントに与えるべき利益は何か?」
いかにして売り込もうかと考えるのではありません。
自分が相手にどんな利益やメリットを提供できるかを考えるのです。
ジェイは言います。
クライアントの人生を豊かなものにするのに貢献すればするほど、クライアントとあなたの結びつきは強くなり、あなたはもっと成功する。
「卓越の戦略」をマスターすれば、私たちは相手が本当に必要としているものを売ることになります。
自分や会社の都合で売りたいものを売るのとは大違いです。
例えば、クライアントが「壁に穴を開けるため2万円の電動ドリルが欲しい」とあなたの店にやってきたとします。
あなたはクライアントの話を聞き、4,980円の電動ドリルでも十分に必要性を満たせると分かりました。
儲かるのは高いプロ仕様の電動ドリルの方です。
でもクライアントのニーズを満たすという点では、安い電動ドリルでも全く問題ありません。
こんなとき「穴を開けるだけなら、4,980円の電動ドリルでも十分です。プロ仕様の電動ドリルは機能がありすぎて、かえって持て余しますよ」と言えるかどうかが問われます。
私たちが物を売るとき、売っているのは実は相手の「問題の解決策」です。
ジェイはこう言います。
まず、クライアントが本当に必要なものを、本人がわかっていなくても、あなたが見極める。
クライアントは、自分が探している特定のものが絶対に必要だと思いがちだ。
しかし、あなたが探りを入れてみると、実はまったく違う、もっとお金のかからない方法がクライアントの問題を解決するとわかる場合もある。
こうなると、あなたは販売員以上の存在だ。
アドバイザーになったのである。
そのクライアントから信用を勝ち取り、結局は次々とビジネスが生まれていくのだ。
仮にあなたが自社の都合を優先させ、顧客に高い電動ドリルを売ったとします。
しばらくして顧客は、安い電動ドリルでも事足りたことに気付きます。
どうしてもっと安い電動ドリルを薦めてくれなかったのかと思うことでしょう。
最悪の場合、販売員に不満を覚え、その店を二度と利用しなくなるかもしれません。
ジェイの言葉を引用します。
ビジネスの成功は、他の人の問題を解決してあげようと願う気持ちから始まる。
他の人の抱えた問題を解決する手助けをし、選択肢をできるだけ広げてあげ、それを実現する方法を見つけるのに手を貸してあげられる人になるのが、あなたの目標であるべきなのだ。
ところが、ビジネスの世界では、ほとんどの人がこの基本的な概念をわかっていない。
自分が実際に売っているものが、商品ではなく「問題の解決策」であるとは思いもよらないのだ。
そして、人にものを売るときに、その人が必要としているものを売るのと、こちらが売らなくてはいけないものを売るのでは、大きく差がつくのをなかなか理解できずにいる。
結果として、どちらが再注文につながり、紹介によってビジネスが広がるかも、わかっていない。
卓越の戦略を実践すれば、あなたが受ける報酬は、驚くばかりのものになる。
「営業の神様」と呼ばれた加賀田晃氏の事例
加賀田セールス学校学長の加賀田氏は、苦い体験談を紹介しています。
腰痛気味だった加賀田氏は、薬局に行って女性店員に相談しようとします。
すると40代とみられる店員は、加賀田氏の話をろくろく聞かずに「それならこれが良いです」と薦めます。
カウンターの貼り紙でPRしている商品でした。
ちょうど売り出し中だったのでしょう。
そして店員は言います。
「実際に他のお客さんは指がこう曲がっていました。そのお客さんがこの薬を飲んで指が真っ直ぐになりました」。
腰痛とは全く関係のない話です。
加賀田氏は言います。
どうも聞いていると、この人は売らんがため。
これを売りたい、この商品を。
僕の立場になって聞いてくれない、考えない、
話をさえぎって「ならこれが良いです」
「いや、そうじゃなくて僕の場合はこうこうで」と申し上げた。
「あ、それなら痛み止めがいいです」
パッと豹変するわけ。
「その痛み止めならワシ、持っています」
とにかく嫌な気持ちがしましたので、何も買わずに出てきました。
不愉快。売らんがためは。
『加賀田式セールスの全て セールス六法《書き起こしマニュアル》』より
女性店員は、加賀田氏を「クライアント」とは考えなかったようです。
自分の売りたい都合だけを優先させました。
加賀田氏のニーズを優先させたなら「どのような症状に困っているのか?」と聴き、加賀田氏の訴えにもっと耳を傾けたことでしょう。
そして加賀田氏の腰痛を解決するのに、ベストな薬を提案したに違いありません。
結果として、店の売上にもつながったはずです。
2.まとめ
「卓越の戦略は、実にシンプルだ。クライアントのニーズを、絶えず、自分のニーズより優先させるだけでいい」。
このジェイの言葉に全てが集約されています。
それはとりもなおさず「私はクライアントに何を与えられるか? 私が与えるべき利益は何か?」を突き詰めることでもあります。
この卓越の戦略を持つか持たないかで、私たちがとるコミュニケーションの形は変わります。
自分優先なら「ノルマがあるから保険に入って」と頼むことになります。
相手目線で見るなら「家族のために保険に入ってあげて」と勧めることになります。
相手の幸せや成功が、あなた自身の幸せや成功と直結していると考えるなら、「あなたが大事です。あなたの幸福こそが、私にとって重要なのです」と言えるようになります。
最後にジェイの言葉で締めくくります。
あなたのビジネスも、人生への投資も、仕事の本質も、必ず、何かすばらしい価値を持つようになると、私は確信している。 (中略)
あなた自身の暮らしが、今まで考えてもみなかったほどに豊かになるだけでなく、人生そのものも豊かになるはずだ。
「卓越の戦略」について語るジェイ・エイブラハムの動画。※英語