「話し上手は聞き上手。聞き上手は質問上手。ポイントは二つ」と元アデコ(株)社長の重茂達(おもい・とおる)氏が著書『ダンドリの手帳』(あさ出版)に書いています。
あさ出版
売り上げランキング: 429,651
「話し上手は聞き上手」とは、よく聞く言葉です。
でももう一歩進めて、「聞き上手は質問上手」であることを知らなければなりません。
聞き上手を間違えると、一方的に話を聞く側に回ることが、正しいと錯覚してしまいます。
でも一方的に聞くだけでは、話している相手も退屈するでしょう。
話し手は、何の反響も返ってこない聞き手に、張り合いを感じないからです。
あなたが聞き上手になろうとするなら、ぜひ質問上手を目指してください。
質問上手こそが、話し上手になる一番の秘訣です。
重茂達の教え
重茂氏の著書『ダンドリの手帳』には、聞き上手な人について「相手の話を引き出す質問が上手な人」と書かれています。
聞き上手な人は具体的に何が上手なのでしょうか。
黙って座っているだけでは、相手は何も話してくれません。
相手が話さなければ、当然、聞くことも不可能です。
つまり聞き上手とは、相手の話を引き出す質問が上手な人といいかえてもいいでしょう。
筆者はさらに、上手な質問をするには「短く、簡潔に」を心がけるよう呼びかけます。
併せて、「オープンエンド」型の質問をするよう勧めます。
「オープンエンド」型の質問とは、単純な「イエス・ノー」で答えが終わってしまわない質問を指します。
「イエス・ノー」の質問は相手が答えやすいものの、後が続かないため、結局は場が盛り下がると筆者は指摘します。
上手な質問をするためには、「短く、簡潔に」と「オープンエンド」を心がけることです。
冗長な質問は、相手が真意をつかみにくく困惑してしまいます。
質問者が何を聞きたいのかわからない、あるいはそれに対してどう答えようか迷うような質問をすると、会話に空白ができ、場が白けてしまいます。
このとき、聞きたいことを整理することで、短く簡潔な形で質問できます。
ただし、「イエス・ノー」で答えが終わってしまうような聞き方ではいけません。
「イエス・ノー」では相手も答えやすいのですが、後が続かないので、結局は場が盛り下がります。
例えば商談で相手のニーズを引き出したいときは、
「○○についてお困りのことはありませんか」
ではなく
「○○について、どういうところでお困りですか」
と質問しましょう。
前者は「とくにありません」で会話が終わる可能性がありますが、後者は困りごとがあることを前提とした質問なので、相手も「あえていえば……」と具体的に答えてくれます。
このように回答が「イエス・ノー」にならない質問を ”オープン・エンド” と呼びますが、聞き上手な人は、オープンエンドな質問で話を盛り上げます。
また、聞き上手と言っても、ずっと質問してばかりでは取り調べのような雰囲気になってしまいます。
相手3分の2、自分3分の1といったバランスで話すと、より会話が弾むはずです。
聞き上手といっても、下手をすると取り調べのような尋問になります。
質問を続けるだけでは、ダメなのです。
重茂氏は「相手3分の2、自分3分の1」のバランスで聞くことを勧めます。
「自分3分の1」となると、聞き手も自分のことを話すことになりますが、会話では、相手に焦点を合わせることを優先させるべきだと考えます。
そのあたりのことは、以下の関連記事に載せています。
自分のことは、相手から聞かれた話せばいいのです。
相手の話を深掘りすればするほど、相手はあなたがどれほど話し上手であるかについて確信の度合いを深めていきます。
自分のことを一切しゃべっていないのに、相手から「あなたは何て話が面白い人なんだ」と感心されることは間違いありません。
加賀田晃流の「話し上手は聞き上手」
私が尊敬する営業の神様、加賀田晃氏は、定価19万8,000円するDVD教材「加賀田式セールスのすべて」(廃盤)で「聞き上手は話させ上手」と説いています。
相手がしゃべる。
それを聞き役に回って「そうですか、よかったですね。うわ、すごいですね」と上手に相槌を打つのが、聞き上手じゃない。
聞き上手というのは、相手が話したいであろうということを、こちらから上手に質問して話させてあげる。
話させ上手が、聞き上手。
聞き上手が話し上手。
従いまして、話し上手というのは自分がしゃべりたいことを上手にカッコよく話せる人のことじゃない。
自分が話したいことを、よどみなくカッコよく話せたら、(そりゃあ)自分は気持ちがいい。
だけどその話題に興味のない人にとって、その話に付き合わされるのは、ときには迷惑。
最初は相槌を打ってても、途中で嫌になる。
もう開放してくれと、やめてくれと。はた迷惑。
話し上手というのは上手にしゃべることではない。
話し上手というのは、自分が満足するんでなくて、相手をハッピーにしてあげる。
相手を満足させてあげる。
いわゆる話し上手とはこれです。
質問上手。
何を質問するか。
一番相手が話したいであろう自慢話。
もしくは相手が今、一番興味を持っていること。
それを質問すればいい。
よくぞ聞いてくれたとばっかりに、相手はとうとうとしゃべります。
このしゃべっている瞬間が一番ハッピー。
質問された瞬間に、相手は舞い上がります。
これ以上の快感はない。違いますか?
ホメなくていい。聞くんです。質問。
(もちろん)ホメることの効果はありますよ。
(でも)質問することは、その100倍効果があります。
加賀田氏は、営業の世界でトップの成績を挙げてきた人です。
人に一瞬で気に入られる術を手に入れた人なので、「聞き上手は質問上手」を相手に好かれるために駆使しました。
聞くときは常に「相手が話したいであろう自慢話」や「一番興味を持っていること」に焦点を当て、どんどんしゃべらせました。
相手は、自慢話をしゃべらせてもらえるわけですから、どんどん快感度が増します。
すっかり聞き手に惚れてしまうわけです。
加賀田氏は飛び込み営業で、日中、主婦しかいない自宅をよく訪問したそうです。
上手にお客様の話を引き出し、気分を舞い上がらせたので、しばしば「誘惑」されたと述懐します。
質問上手になれたら、相手をホメる以上に喜ばせることができます。
男性なら、モテモテになるでしょう。
女性なら、男性のハートを射止めることができるはずです。
高校生時代の苦い思い出
高校生時代、親しくしていた友人から突然無視されるようになったので、人間関係で悩みました。
二人とも同じ中学から、当時市内では2番目にランクされる高校に進学しました。
一緒に登校したり下校したりしていたのに、ある日を境に避けられるようになったのです。
原因は不明です。
知らず知らずのうちに失態を演じ、相手をあきれさせていたのかもしれません。
そんなとき、転校してきたニシヤマ君と仲良くなります。
一学年のときはクラスが一緒でした。
ところが二学年のとき、クラスが別々になります。
ちょうど部活と勉強の両立ができなくなり、私は敗残者のようにして退部しました。
学校の試験順位もぐんぐん落ち、最高で20番台だった成績が300番台まで下がります。
当時一学年が300数十人でした。
恐らく鬱病の初期症状だったのでしょう。
けだるく、何をやっても手応えのない日々を過ごしていました。
私の高校時代は、後半は灰色です。
そんなとき、違うクラスのニシヤマ君が廊下で外をぼんやり眺めている私を見つけ、話しかけてくれます。
なぜか私の頭には「話し上手は聞き上手」がインプットされていたので、とにかくニシヤマ君の話には相槌を打って聞き続けることに専念しようと思いました。
ニシヤマ君は面白い話題を提供してくれます。
私はひたすら聞き役に回ります。
「ふーん、そうなんだ」。
しっかり相槌も打てたはずです。
ところが、ニシヤマ君は途中で、話していても面白くないと悟ったのでしょう。
何を言っても私から「ふーん、そうなんだ」くらいの返事しか返ってこないからです。
まるで打っても響かない太鼓でした。
最終的に業を煮やしたニシヤマ君は、私に何か忠告めいた苦言を呈します。
「おかしいよ。絶対におかしいよ。どうしたの」と私を責めました。
自分では正しく傾聴しているつもりでしたが、一方的に聞き続けることは傾聴ではないと今なら分かります。
もしも当時の私に戻ることができるとしたら、私はニシヤマ君のしゃべりたい話を質問で引き出し、もっと「興奮」させることができるでしょう。
あれからだいぶ年月は経ったのに、ニシヤマ君とのエピソードが忘れられません。
聞き上手を間違って解釈したために、ニシヤマ君という仲の良い友も失ってしまった高校生活は、今振り返ってみても寂しいものでした。
まとめ
話し上手は、聞き上手であり、聞き上手とはすなわち、質問上手を指します。
ただし一方的にうなずくだけでは、聞き上手とはなりません。
質問を上手にできるようになってこそ、聞き上手になれます。
重茂氏がアドバイスするように「オープンエンド」型の質問をするのも手です。
加賀田氏が説くように、「相手が話したいであろうこと」に焦点を当てて聞き出すのも効果的でしょう。
質問上手になれば、好かれる話し手になれます。
質問上手になったあなたの周りには、仲の良い友達がたくさんできているはずです。
コメントを残す