求人・転職サイトをのぞくと、営業職の募集が多いことに気付きます。
そしてどんな会社にも必ず営業部門があります。
営業なくして会社は成り立ちません。
中には口下手なのに、営業職に就かざるを得なかったという人もいることでしょう。
「営業はコミュニケーション能力が問われる」と聞いても、どうすればいいのか分かりません。
そこで、本サイトの記事では「コミュニケーション能力=聴く力」ととらえ、どうすれば「聴く力」を磨くことができるかをお伝えします。
結論を言えば、何より相手に焦点を当てて「聴く」ことを心がけることです。
そうすれば、相手と良好な関係を築いて、好かれる営業マンになることができるでしょう。
1.「コミュニケーション能力=聴く力」
営業マンに必要なコミュニケーション能力は「話す力」と思うかもしれませんが、実は「聴く力」の方がもっと重要です。
どんなに口が達者で、よどみなく商品説明ができたとしても、相手のニーズも聴かないうちに話し始めたら、顧客はセールストークにうんざりすることでしょう。
人は売り込まれることがイヤだからです。
「コミュニケーション能力=聴く力」ととらえるなら、営業マンが最初にするべきことは顧客と信頼関係を築くこと。
まず相手に焦点を当てて「聴く」ことから始めなければなりません。
作家・営業コンサルタントの和田裕美さんは、『人に好かれる話し方』(大和書房)という本を出しています。和田さんは日本ブリタニカ㈱に入社し、世界№2の営業成績を打ち出した女性です。
「人に好かれる話し方」を伝えているはずですが、「人に好かれる聴き方」とタイトルを変えた方がいいほど、「聴くこと」に紙幅を割いていることに気付きます。
実際、『人に好かれる話し方』第二章の最初の見出しには、「営業の仕事は『聞くこと』から始まる」とあります。
この本の中には「人は自分の話を聞いてくれる人が好き」とありますが、営業にも当てはめることができます。
つまり、「顧客は自分の話を聞いてくれる営業マンが好き」ということです。
『プルデンシャル生命トップ営業7人のノウハウ プロは「売り方」が違う!』(あさ出版、2003年刊)に、エグゼクティブ・ライフプランナーである清水克也氏の記事が載っています。
聴くスキルにまつわるエピソードが非常に参考になるので、引用します。
題して「妻相手のロールプレイで学んだ、一言の大切さ」。
前職で営業経験の少ない私は、夜自宅に戻ってからも、妻を相手によくロールプレイをした。
お客様役になって相手をしてくれた妻から気づかされたこともたくさんあった。
例えばこんなふうだ――
私「奥様は今までに入院されたことはありますか?」。
妻「いいえ、ありません」。
私「そうですか。実は私もないんですよ」。
そこで妻からストップが入った。
「それって、変だよ」と言う妻に対し、
私が「何で? 親近感がわくじゃないか」と言い返す。
「あなたが入院したことがあろうがなかろうが、私にはどうでもいいことなの。それよりどうして私に焦点を当てないの?
例えば『健康でいらっしゃるんですね』『何かスポーツでもやっていらっしゃるんですか?』とか、私のことを聞いてよ!」。
言われてみれば、まさにその通りであった。
「お子さんは何人いらっしゃるんですか?」と聞いて、お客様が「男の子が二人なんです」と答えても、決して「うちは女の子が二人でして」と返してはいけない。
自分のことを話したくなるのをグッとこらえて、「にぎやかですね」とか「ケンカしたりしますか?」など、相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく。
「清水さんのお家は?」と聞かれたら、その時答えればよいのである。
清水氏は、妻とのやりとりを通して「相手に焦点を当てること」の大切さを学んだと言います。
私たちは普段の会話の中で、つい自分のことをペラペラしゃべりたくなるものです。
そこをグッとこらえ、「 相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく」。
身構えている顧客が相手の場合はなおさら「相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく」ことが必要になります。
「相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく」と、相手が本当は話したくて仕方がない話題を、期せずして探り当てることもあります。
相手に焦点を当てて聴く
私の体験談を紹介します。
北海道の得意先の担当者があるとき雑談で「今週末、大学に通っている息子が帰ってくる」と話してくれました。
この発言から以下のことが分かりました。
①その担当者には息子さんがおり、大学生であること。
②実家を離れ、北海道外に住んでいるかもしれないこと。
そこで「大学生の息子さんがいらっしゃるのですか。
どこに住んでいらっしゃるのですか」と質問すると、「宮城県仙台市に住んでいてね」と返事。
私が「仙台は遠いですね。なかなか帰ってこられないと思いますが、盆や正月でもないのにどうして帰ってこられるのですか」と尋ねると、
「地元の就職先を探したいそうなんだ。ただ大学院に進学することも検討しているようでね」と言います。
詳しく聴くと、息子さんのいる理工学系の学部では、学生の大多数が大学院に進学するそうです。
大多数が大学院に進学するといえば、相当優秀な学生が集まっていることになります。
ピーンときた私が「どこの大学に通っているのですか」と聴くと、案の定、仙台市にある名門の国立大学、すなわち東北大学でした。
担当者は最初、大学名を明かしませんでした。
こちらも下手に聴くと、墓穴を掘りかねません。
学歴の話題は、慎重に扱う必要があります。
私は、あえて大学名を最初に尋ねることはしませんでした。
でも有名大学となれば、話は別です。
担当者が、名門の国立大学に通う息子さんを誇らしく思っているのは間違いありません。
私は「息子さん、優秀ですね」と大いに感心しながら、会話を続けました。
「いやー、そんなんでもないよ」と担当者が照れるようにして話していたのを覚えています。
この担当者とは、それ以降もちょくちょく雑談をしましたが、私が来るのを楽しみに待ってくれている様子でした。
「相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく」ことによって、相手が本当は話したくて仕方がない話題を探り当てることができます。
うまく探り当てることができれば、引き出さない手はありません。
どんどん話してもらって、あなたの心証を良くしましょう。
まとめ
営業マンは、必ずしもしゃべり上手である必要はありません。
営業の第一歩は、顧客と良好な関係を築くことです。
良好な関係に築くには、「 相手に焦点を当てて聴く」ことが欠かせません。
「聴く力」を磨き、顧客と信頼関係を築くことができれば、誰からも好かれる営業マンになっているはずです。
心がけるべきは、「 相手に焦点を当てて、どんどんしゃべっていただく」ことです。
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