会話はよくキャッチボールにたとえられます。
「会話はキャッチボールが大切」と書けば、多くの人は「そんなことは知っている」と言うでしょう。
けれども知っていることと、実践することは別です。
本サイトの記事では、加賀田セールス学校学長の加賀田晃氏の教えをもとに実践しやすい会話の方法をお伝えします。
一言でいえば、あなたが「しゃべってから質問」を繰り返せばOKです。
これだけで会話が効果的に盛り上がります。
1.まず、あなたが話して質問する
用事があってあなたが先方を訪れたとします。
会話の主導権を握るピッチャーは、あなたです。
まずピッチャーのあなたから話しかける必要があります。
順番は以下の通りです。
これを繰り返すだけです。
端的に言えば「しゃべってから質問」が基本となります。
私は駆け出しの記者時代、会っていきなり本題の質問を相手にぶつけていました。
雑談もなしにです。
今思えば、相手にずいぶんとぶしつけな取材をしていたなぁと反省することしきりです。
例えば、あいさつもそこそこにすぐ本題を切り出していました。
以下のような感じです。
だれでもいきなり質問されたら、一瞬言葉に詰まります。
前置きがないので、まったく予測がつかないからです。
でも以下のように話しかければ、もっとスムーズに答えてもらえます。
ところで来週のスケジュール表を確認したら、〇〇講習会というのがありますよね。
今までにない新しい講習会ですが、ハヤセさん、これは一体どういう狙いがあるのですか?
……(説明が続く)
このように質問者が何かを質問する際は、何かをしゃべってから質問するのがベターです。
相手の名前をできるだけ添えるのも効果的でしょう。
デール・カーネギーと加賀田氏は共通して、話すときに相手の名前を添えるよう勧めています。
デール・カーネギー著『人を動かす』(創元社)の中には「人に好かれるいちばん簡単で、わかりきった、しかもいちばん大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだ」とあります。
加賀田氏も「名前を呼ばれた時、私達は心地よい響きを感じる」と人間の本質を突いています。
加賀田氏が指摘する下手なアナウンサーの例
大友義隆著『必ず売るための「究極の説得」の秘密』(日新報道)には、インタビューが下手なアナウンサーの事例が紹介されています。
一般にインタビューとは、相手に質問を投げかけることです。
ところがインタビューが下手なアナウンサーは、質問になっていません。
独り言の感想になっていると加賀田氏は指摘します。
以下、加賀田氏の話を引用します。
例えば、相撲で横綱に勝てば“金星”と言って、特別室でインタビューを受けるが、あなたもこれから注意してご覧いただきたい。
よくアナウンサーは、相撲取りは口が重くてあまり話してくれない、とこぼすが、とんでもない。
アナウンサーの話の進め方が下手なのだ。
アナウンサー…今日は快心の相撲でした…(マイクを差し出す)
力士……(沈黙)
これは何ですか?
「…でした」というのは独り言以外の何物でもなく、そんなふうに独り言の後にマイクを差し出されても、質問されている訳でもないのに、何と答えられますか。
一瞬、言葉の出ないのが当たり前で、よくても「ハァ…」ぐらいで終わってしまう。
この場合だったら、「今日は、〇〇関の一気の寄りで勝負がつきましたが、勝因はどこにあったのでしょうか?」と、
先ほどの“①まず、あなたが話して質問する”ようにすれば、質問されて沈黙できる人はいないから、
多分、相手は、
「立ち合いが良かったと思います」
とか、
「うまく、もろ差しになれたのが良かったと思います……」
ぐらいの答えは返ってくるはずだ。
アナウンサー…四連勝ですね。
力士…ハイ…。
こんな質問をするなんて、アホか!! と言いたい。
これも真の質問ではなくて事実の同意を求めているだけだから、「ハイ」以外に答えようがない。
アナウンサー…横綱は何をすることもなく、土俵を割ってしまいました―
力士………(沈黙)
アナウンサーを辞めろ!!と言いたい。
力士はせっかく金星をあげたのに、こんなヘタクソな、キャッチボールになっていないインタビューでは、この感激が薄れてしまう。
このようにインタビューが下手なアナウンサーは、「事実の同意」を求めるばかりで真に質問をしていないと加賀田氏は指摘しています。
そして大事なことは「まず、あなたが話して質問する」ことだと強調しています。
「尋問」とは正反対になります。
尋問は、一方的に質問を投げかけるものです。
面接になってしまった失敗談
私はハワイで挙式した弟の結婚式に出席したとき、新婦の友人たちと話をしたときのことが忘れられません。
一人の女性が「何か面接を受けているみたい」とつぶやきました。
当時はまだ、「しゃべってから質問」の原則を知りませんでした。
とにかく新婦の友人たちをもっと知りたいと思って、矢継ぎ早に質問を繰り返していました。
「面接を受けているみたい」とは、言い換えれば「尋問を受けているみたい」と同じ意味です。
以下のような会話を交わしました。
分かりますでしょうか。
私が一方的に質問しています。
これでは面接か尋問です。
新郎の兄ということで我慢して答えてくれたのかもしれませんが、答えるのがイヤになってもおかしくありません。
もし私が次のように質問していたら、もっと自然な会話になっていたに違いありません。
新婦とは、いつからの付き合いですか?
もう十年以上の付き合いになるんですね。当時の新婦はどんな高校生でしたか?
図書室で静かに本を読んでいるタイプでしたね。
後者の会話の方が、つながりがスムーズです。
まず私が話してから質問し、相手の答えが返ってきたら、それにふれて、再び質問をする。
このパターンを繰り返せば、会話がスムーズに流れます。
相手も面接もしくは尋問を受けているとは思わないことでしょう。
加賀田氏は言います。
①話して質問
②相手の答えに触れて、また話して質問を繰り返すのが、「キャッチボール」なのだ。
このキャッチボール流にすれば、話は永遠に続けられる。
2.まとめ
会話は「キャッチボール」をすることが効果的です。
「キャッチボール」とは、主導権を握るあなたがまず話してから質問し、相手の答えに触れてからまた質問を行うといったことの繰り返しです。
会話が途切れることはありません。
相手の答えに触れてから質問するので、面接や尋問になる恐れもありません。
この「キャッチボール」を意識するだけで、あなたのコミュニケーション能力は大きくアップします。
①まず、あなたが話して質問する。
②相手は質問に答える。
③相手の答えに触れて、また話して質問する。