なぜか私が小さいころ、親はカフェインの入ったコーヒー飲料を飲ませようとはしませんでした。
幼少時の記憶に、祖母が連れていってくれたデパートで缶コーヒーを飲み、腹を下した思い出があります。
体質的に合わないのだと思います。
本格的にコーヒーを飲むようになったのは、高校卒業後、浪人生になったときからです。
親戚の伯母さんが、一人暮らしをすることになった私に、インスタントコーヒーの瓶をくれました。
大学生時代は、ポコポコと音を立てるコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹(い)れました。
社会人になってからは、ドリップコーヒーを会社に持参し、ステンレス製ボトルにお湯を注いでいました。
ここ数年は、自宅兼事務所の職場で、口さみしくなればコーヒーを淹れたものです。
それだけでは飽き足らず、エナジードリンクを一日に2本飲むことさえありました。
朝は忘れずに100mlの小瓶に入った滋養強壮の栄養ドリンクをグイッと一気に飲み干しました。
コンビニで清涼飲料水を買う場合は、コーラをはじめカフェインが含まれた商品を選びました。
カフェインの効き目が強ければ強いほど、仕事の効率も上がると信じていました。
コーヒーを常習的に飲むようになってから、気付けば四半世紀が過ぎようとしています。
2018年5月、私はカフェイン中毒から解放されました。
カフェイン信者だった
端的に言うと、人は自分の信念にそぐわない事実からあえて目をつぶろうとします。
カフェイン信者だった私は、カフェインの効能しか知ろうとしませんでした。
カフェインの問題については軽視し、ほとんど実害がないものとみなしました。
このように見たくない事実から目をそらそうとする傾向を「確証バイアス」といいます。
確証バイアス(かくしょうバイアス、英: confirmation bias)とは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと[1]。認知バイアスの一種。
引用:Wikipediaより
逆にカフェインは多くの効能があると信じて疑いませんでした。
例えば、思いつくだけ挙げると以下のような効能があります。
朝から晩までカフェイン漬けの毎日でした。
夜にコーヒーを飲んでも、眠れないことはないと豪語していました。
ちなみに私は酒を飲まず、タバコも吸いません。
でもコーヒーはがぶ飲みしていました。
酒・タバコ・コーヒーは嗜好品の三点セットのようなものです。
知人から「酒もタバコもやらないのに、コーヒーだけは飲むんだ」と言われたことがあります。
意外だったのでしょうか。
もちろん私は、意に介しませんでした。
カフェインのデメリット
カフェインの致死量はWikipediaによると、5~10gになるようです。
カフェインの半数致死量 (LD50) は一般に約200mg/kgと言われているが、個体差があり、年齢やカフェイン分解酵素(CYPやモノアミンオキシダーゼ)の活量や肝機能に違いがあるため、5g – 10gが致死量と考えてよい。
引用:Wikipediaより
2015年には九州地方の20代男性が、国内初のカフェイン中毒で死亡したことが報じられました。
(参考:毎日新聞「カフェイン入り飲料 中毒死 眠気覚ましに常用で、国内初」)
農林水産省と厚生労働省は、カフェインの過剰摂取について注意を呼び掛けています。
カフェインの人に対する影響
カフェインは、神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と化学構造が似ており、アデノシンが本来結合する場所(アデノシン受容体)にとりついてアデノシンの働きを阻害することにより神経を興奮させます。
コーヒーは、適切に摂取すれば、がんを抑えるなど、死亡リスクが減少する効果があるという科学的データも知られていますが、カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります。
長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています。
農林水産省:「カフェインの過剰摂取について」
カフェインは、コーヒー、紅茶、緑茶などの日常的に摂取する食品に含まれています。また、コーラなどの清涼飲料水にもカフェインが含まれています。特に、カフェインを多く添加した、いわゆるエナジードリンクなどでは、コーヒー、紅茶、緑茶などより多くのカフェインを含む製品もあります。
いわゆるエナジードリンクなどは、缶や瓶1本当たりにすると、コーヒー2杯分に相当するカフェインを含むものもありますので、製品に記載されている表記をよく読み、子供、妊婦、授乳中の方、カフェインに敏感な方などは飲用を控えることや、他のカフェインを含有する製品と併せて摂取しないことのほか、1日に何本も飲まないように注意しましょう。
また、カフェインを含有する医薬品を服用する場合は、多量のカフェインを一度に摂取することから、カフェインを含有する飲料との併用は避ける必要があります。
NHKの硬派な報道番組「クローズアップ現代」(2017年9月21日付放送)は、「急増! カフェイン中毒 相次ぐ救急搬送 いま何が」と題して、カフェイン中毒の問題を取り上げました。
(参考:NHKクローズアップ現代「急増! カフェイン中毒 相次ぐ救急搬送 いま何が」)
カフェイン中毒で救急搬送される人が増えているそうです。
私自身、仕事の能率アップを図るため、コーヒーやエナジードリンクを水代わりに飲んでいました。
受験生が、集中力を高めることを目的にエナジードリンクに手を出す気持ちはよく分かります。
でも、カフェインの恐ろしいところは、だんだんと体がカフェインに慣れ、摂取量を増やさないと以前とは同じ「効果」を感じられなくなることです。
カフェイン漬けになっていくのです。
私の場合、仕事で営業先を訪問する前にグイッと缶コーヒーを飲み干し、仕事が終われば車の運転席で缶コーヒーをプシュッと開けました。
歯も常に黄ばんでいる状態でした。
カフェイン摂取をやめるきっかけ
毎日、必ずドリッパーでコーヒーを淹れていました。
800mlのコーヒーサーバーに、一日2~3回はコーヒーを落とします。
ブラックよりも加糖を好むので、砂糖を入れるのを忘れません。
学生時代はスリムでしたが、気付けば当時よりも10数kg体重が増えました。
加えて少し歩くと、動悸がするようになりました。
さらに休みの日は、一日中寝ていても疲れが取れません。
今思えば、カフェインが脳を覚醒状態にしていたので、寝ても十分に熟睡できなかったのだと思います。
疲れが十分に取れないわけです。
だから余計に栄養ドリンクやコーヒーの力を借りて、身体を無理に起こしていました。
悪循環です。
2018年4月18日午後6時、いつものようにコーヒーを淹れた私は、吐き気を催すような目まいを感じました。
貧血による立ちくらみとも違います。
その日も眠気を覚ますため、コーヒーを何度もがぶ飲みしていました。
だから、目まいの原因が「コーヒーの飲み過ぎ」にあると直感で分かりました。
カフェインの摂り過ぎだと、さすがに認めざるを得ませんでした。
カフェイン断ちに挑戦
目まいに襲われた日から、カフェイン断ちを始めることにしました。
2日目以降が大変でした。
猛烈に眠くてダルいのです。
無理やりカフェインによって脳を覚醒状態に保っていたのに、カフェインが入ってこなくなったためでしょう。
実際に万年床を敷いて寝るしかありませんでした。
職場に行っていたら、仕事が手に付かなかったでしょう。
カフェインの禁断症状は、それだけではありません。
頭痛が強烈でした。
ズキンズキンと脈打つような頭痛が収まりません。
苦痛に顔をゆがめながら思いました。
「カフェインに依存するのは絶対に良くない」と。
禁断症状は「離脱症状」とも言いますが、七転八倒するような苦しみをもたらすカフェインが、いかに身体をむしばんでいたかに気付きました。
私のようにカフェイン中毒に侵された身体は、簡単には直りません。
一週間は継続して、ダルさと眠気と頭痛のトリプルパンチに見舞われました。
代替品を検討 ルイボスティーを知る
コーヒーは断つことにしましたが、口さみしさから何かを飲みたくなります。
コーヒーを飲めない妊婦が、ルイボスティーを愛飲することを知り、私もコーヒー代わりにルイボスティーを飲むことにしました。
ルイボスティーはノンカフェインです。
ドラッグストアーでルイボスティーを探したところ、思った以上に値が張ります。
Amazonで検索すると、値段が手ごろで量も多い商品が出てきました。
オーガニックなので安心です。
ナチュラルショップなごみ ルイボスティー オーガニック なごみ ×100個 | ||||
|
さっそくそのルイボスティーを取り寄せ、ティーバッグ2つをヤカンに入れて沸かし、飲んでみました。
さっぱりした味わいです。
コーヒーを飲んだあとのように、口臭がにおうこともありません。
こうしてルイボスティーのお陰もあって、私はコーヒーを飲まずに済むようになりました。
カフェインの含有飲料は意外に多い
紅茶や緑茶、煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶、玄米茶などにはすべてカフェインが含まれています。
参考:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A 」
ココアやチョコレートにもカフェインが含まれています。
参考:【医師監修】「ココアやチョコレートのカフェイン含有量はどれくらい?」
お茶といっても麦茶だけは幸いカフェイン・ゼロです。
参考:「ノンカフェイン飲料のすべて」
カフェイン断ちの効果
カフェイン断ちをして約6ヵ月が経ちます。
頭痛に苦しめられることはなくなりました。
クーラーがない夏は、麦茶で乗り切りました。
夜も熟睡できているようです。
パッと目が覚めて起きられます。
カフェインを摂らないので、睡眠の質が向上したことは間違いありません。
動悸も完全ではありませんが、なくなりました。
今の私には、運動不足の解消が必要なようです。
血圧が下がりました。
健康診断を受けたところ、最高血圧が102、最低血圧が47mmHg でした。
一年前の最高血圧が108、最低血圧が68mmHg だったので、より低血圧になりました。
最低血圧の値が低すぎるので、やや心配ですが、検診結果としては異常でないようです。
以前はコーヒーを飲まないと集中できない気がしていましたが、今ではコーヒーを飲まなくても十分に集中できます。
そのほか、心なしか歯の着色が薄くなったようにも感じられます。
まとめ
イトーヨーカ堂のスーパーのレジに並んだとき、ガテン系と思われる男性がかごに10本近くのエナジードリンクを入れていました。
一本約200円と決して安くはありません。
本数の多さにギョッとしました。
でも男性は、力を発揮するにはエナジードリンクが必要だと考えたのでしょう。
身体への先行投資だと思えば、一本200円だろうと惜しくはありません。
カフェイン断ちをする前の私なら、そう考えます。
実際にAmazonでエナジードリンクを24本まとめ買いしようと本気で考えたこともあるくらいです。
ですからガテン系の男性を見たとき、昔の自分を見ているような気持ちになりました。
ただし今の私からすれば、エナジードリンクに頼る男性は哀れです。
カフェイン中毒の「負のループ」に陥ることになるからです。
紅茶やコーラ、ココア、チョコレートにまでカフェインは含まれています。
さすがにチョコレートを口にしないわけにはいきません。
ただ、コーヒーに関しては、今後一切飲まないことにしました。
紀伊国屋書店札幌本店に行くと、スターバックスコーヒーの香ばしい香りが漂ってきます。
人生における一つの楽しみを永遠に失ったことに気付かされました。
アルコール依存症患者は、断酒したあと再びアルコールを口にすれば、アルコール中毒が再発し、元の木阿弥になるようです。
参考:「アルコール依存症治療の成功のカギ」
カフェイン中毒者であった私も、できればカフェインに依存しない生活を目指したいと考えます。
そのため、極端かもしれませんが、コーヒーを一切飲まないことを決めました。
現在、カフェインを摂らないメリットの方が、摂るメリットを大幅に上回っています。
【追記】2019年8月18日
メンタリストDaiGoが下の5分程度の動画で、コーヒーが「わずか20分で便秘を改善する飲み物」であることを紹介しています。
要は、コーヒーを飲むと腸が刺激されて排便への欲求が高まるということです。
女性ほど効果が高いことが分かっているそうです。
このあたりは、メンタリストDaiGoらしくコンケン大学(タイ)やロイヤル・ハラムシャー病院の調査結果などを引用しています。
ブログ「珈琲ラボ」にも、メンタリストDaiGoが動画で話した内容とまったく同じ内容の記事が載っています。
参考:珈琲ラボ「コーヒーには便秘を改善させる効果がある」
この辺りは、カフェインのデメリットとメリットの釣り合いを考えて、判断する必要がありそうです。
1.眠気を覚ます
2.精神を興奮状態にさせる
3.片頭痛をやわらげる
4.集中力を高める(?)
※「集中力を高める」というのは錯覚かもしれません。