守秘義務があるため、詳細は記せませんが、現在、一時的にあるカスタマーセンターでお客様の不満を調査する仕事をしています。
具体的に言えば、電話で販売店を利用したお客様に店の満足度をうかがうというものです。
電話で話してくれるお客様は、店の不満を話してくれますが、同時に「ぜひ活かしてほしい」と自身の発言が会社のサービススキル向上に役立つことを願ってくれます。
お客様は、悪気があって不満を言っているわけではありません。
「ぜひ活かしてほしい」との言葉を聞いたときは、男気を感じました。
中には、店に対する不満を散々述べた後、私に対して「ありがとう」と言って電話を切るお客様もいます。
それだけ鬱憤が溜まっていたということでしょうか。
吐き出すものを吐き出せて気持ちが軽くなったのかもしれません。
とにかく「聴く」ということの大切さを、再認識した次第です。
私たちは、とかく自分の話を聞いてもらいたがります。
「聴く」ことから、人間関係が始まるといっても過言ではありません。
今一度、「聴く」を意識してみませんか。
不満を聞き出す
「何かご不満はありませんか」と尋ねたら、例えば「販売店が遠い」と答えが返ってくることがあります。
正直なところ「販売店が遠い」という発言を、どのように深堀りしていけばいいのか困ります。
第三者が「販売店が遠い」という発言を聞けば、「それは不満には当たらない」と言い返すかもしれません。
私だったら「それはあなたの家から遠いだけであって、販売店が悪いわけではないでしょう?」と心の中で言い返します。
でも、反論していては始まりません。
私の仕事は、お客様の不満を聞き出すことだからです。
例えば「お客様、どれくらい遠いのですか」などと探りを入れます。
すると「車で20分くらいかかる。以前はもっと近くにあったのに移転してしまった。移転した店舗は駐車場が狭いので不便だ」と答えるかもしれません。
これは実際にあったお客様の言葉を一部脚色していますが、一見不満とは関係なさそうな発言も、深掘りすれば、意外な本音が透けて見えてくることがあります。
私が忘れられないのは、さんざん不満を吐き出してもらったあと、お客様から「ありがとう」と言われたことです。
そのお客様は、「どのようなご不満がおありですか」と尋ねると、堰を切ったように話してくれました。
いかに店員が仏頂面で愛想がなく、逆ににらみつけていたかといった内容を延々話してくれました。
にらみつけていたというのは尋常ではありません。
もっと掘り下げて聞いてみました。
すると、店舗のすべての店員が無愛想というわけではなく、一部の女性店員がそのお客様を外国人だからという理由でそっけなく扱ったようなのです。
「さようでございますか。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と私は理解を示します。
高い熱量でしゃべり終えたお客様は、不満を吐き出し、聞いてもらえたことで安堵したのでしょう。
電話を切るときに「ありがとう」と言ってくれました。
質問には相手へのリスペクトが必要
今回の不満を聞き出すことと趣旨は違いますが、「質問」の大切さを説いた本に、おちまさと著『相手に9割しゃべらせる質問術』(PHP新書)があります。
第一章に「人間はあなたが思うよりずっと深いもの」という節があります。
筆者のおちまさと氏はリスペクトの精神をもって、対談相手に臨むと語っています。
リスペクトの精神とは、おちまさと氏の言葉を借りれば「自分の心の根っこに、相手に対する尊敬の気持ちをしっかり置く」ことです。
相手を自分よりもすぐれた存在と認めることが、リスペクトの精神です。
さらにおちまさと氏は、尊敬の気持ちに加えて「相手を理解しようとする態度」を持つよう勧めます。
「あなたが尊敬する相手は、あなたの想像をはるかに超えた深い人生観や経験、知恵の持ち主」だからです。
そのおちまさと氏の言葉を抜粋します。
人間はあなたが思うよりもずっと深いものです。どんな人のなかにも、聞いてみなければわからない学びのタネが詰まっています。
(略)
会社の上司も同じです。組織のなかで上のポジションに這い上がってきた人には、ちゃんと “そうなる”理由があるのです。
(略)
「上司がつまらない」のではなく、上司のいいところを発見できないのは、自分の熱意が足りないからなのです。
あなたが「どうせこの程度」と思っていれば、「その程度」の話しか聞き出すことはできません。
まず、自分のマインドを変えましょう。
「どんな人の中にも、聞いてみなければわからない学びのタネが詰まっている」とは含蓄のある言葉です。
相手を「どうせこの程度の奴 」と見下す人には、決して思いつかない言葉です。
事実、「どうせこの程度の奴」と思ったら、相手から学びのタネを引き出すことは不可能になります。
質問する気すら起きないでしょう。
少し無理やりこじつけます。
不満を聞き出す作業も、「どうせクレーマー」と思ったら、相手から改善のタネを引き出すことは不可能となります。
まとめ
お客様の不満を聞くという作業は、骨が折れるように感じますが、そんなことはまったくありません。
「店が遠い」といった突拍子もないような不満でも、深掘りすれば真意が見えてきます。
そして不満を吐き終えたお客様は、どこか胸のつかえが下りたような雰囲気になります。
上手に話を引き出すことができれば、逆に感謝されるほどです。
骨が折れるどころか、やりがいを感じます。
不満ですら聞いてもらえたら、人は感謝の気持ちを持つと言えます。
ましてうれしいことや楽しいことを聞いてもらえたら、人は聞いてくれた人に親愛の念を念を示すといって間違いありません。
私たちは、一人ひとり本当は寂しい存在です。
内心では、だれかから話を聞いて理解してもらうことを欲します。
でも受け身で待つのではなく、欲しているものをまず与える側に回りませんか。
あなたが「聴く」を意識することによって、「ありがとう」と感謝されるコミュニケーションのきっかけが生まれます。
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