もしもあなたが接客の仕事に携わっているなら、顧客に対して愛想よく振る舞いましょう。
対顧客のコミュニケーション能力が向上するからです。
愛想よく接するには、心のどこかで〈来客していただき、ありがたい)という気持ちを感じる必要があります。
さて日曜日の朝、午前10時近くに 頭文字にFが付くコンビニを利用しました。
40代と思われる短髪で浅黒い小太りの女性店員が一人だけいました。
ワンオペでしょうか。
私は小腹を満たすために、ゼリー飲料とチョコレートバーを手に取ります。
会計を済ませようとレジに向かうと、店員はレジカウンターから出て、作業を始めようとしているところでした。
レジ前に来た私は「レジをお願いします」と丁重な口調で呼びます。
店員は「チッ」と舌打ちをして面倒くさそうにレジに回り、仏頂面のままバーコードを読み取ります。
よほど機嫌が悪かったのでしょうか。
「仕方がないから接客してやってるんだぞ」といわんばかりの態度です。
客の私が何か悪いことをしたような気分になります。
〈お買い上げいただき、ありがとうございます〉という気持ちが少しでもあれば、客をぞんざいに扱うことはできないはずです。
何となく私自身の「自己重要感」(または自尊心)がシュルシュルとしぼんでいくような心もとなさを感じました。
ホテルマンをしていた私の経験
大学に5年間も在籍した私は、就職するかしないかで悩んでいました。
えり好みをして何社か就職試験を受けましたが、受かりません。
当時は「SPI」という試験がはやっていて、対策用に勉強しないと歯が立ちませんでした。
やむなく大学院の進学を志すものの、ゼミの担当教授とは折り合いが悪く、院の試験にも落ちます。
卒論を書かず留年するつもりでしたが、なぜか単位が取得できて卒業することになりました。
就職もダメ、大学院もダメとなったら、とりあえず日銭を稼ぐため、アルバイトをするしかありません。
選んだのが、ビジネスホテルの夜勤フロント係のアルバイトでした。
15時間勤務で日給 1万2,000円ほどでした。
ホテルでは、周りに大卒のスタッフはいません。
社長からは「どうせ学生時代は、ろくに勉強もせず女遊びでもしていたんだろ?」と馬鹿にされる始末です。
ホテルに泊まりに来ている常連客の中には「三菱重工業株式会社」の社員もいました。
東証一部上場企業です。
私が国立大学を卒業していることを知ると、その常連客は「もったいないな」とつぶやきます。
三菱重工に入社してきた大卒の新人は、大きなプロジェクトに参加する機会が与えられ、数千万円単位の損失を発生させてしまったことなどを話してくれます。
要は「同じ大卒でも、スケールが違う」ということを言いたかったのでしょう。
片や時給800円程度のアルバイトの私。
片や巨大プロジェクトに加わり、数千万円単位のお金を動かす上場企業の新人。
挫折感を味わっていた私は、「勝ち組」と「負け組」の差を思い知らされ、さらに打ちのめされました。
ホテルの先輩スタッフからは、言葉遣いや接客態度を根本的に叩き直されました。
もともと日銭稼ぎのためにホテルマンを始めた私に、ホスピタリティの精神などひとかけらもありません。
電話による受付も、宿泊客の接客も事務的に淡々と処理するだけです。
とうとうしびれを切らしたのか、先輩スタッフが「お前は本当に一杯食わせ者だな!」と言い放ちました。
※食わせ者=うわべからだけでは判断できない、油断のならない者
私は正直なところ、ホテルのフロントの仕事を誇れませんでした。
しょせんアルバイトです。
でも、先輩スタッフは私に言いました。
「お金をもらっている以上、アルバイトだろうと関係ない。お前はプロなんだ。いいか、プロとして働け」。
機械的に宿泊客をもてなしていた私が、徐々に変わっていったのはそれからです。
感情を込めて宿泊客にあいさつするようにしました。
「いらっしゃいませ」というセリフに、〈遠いところからよく来てくださいました。泊まってくださり、ありがとうございます〉という思いを込めたのです。
心なしかあいさつする自分の声が、大きくハッキリと聞き取れるようになりました。
次第にサービスする仕事も、面白く感じられてきました。
無愛想な店員に思うこと
私自身、かつて無愛想な接客を平気で行うホテルマンでした。
だから余計にコンビニの無愛想な店員を見たとき、残念な気持ちがしました。
ふてくされていたかつての自分の姿がダブるからです。
「負け組」だとあきらめ、お金のためだけに感情を押し殺して働く自分。
そこに成長と進歩はありませんでした。
自己憐憫に浸っていると、顧客が求めていることに気付かなくなります。
私がアルバイトで心掛けるべきことは、宿泊客に「感じのいいスタッフだな」と感じてもらえるよう笑顔で愛想よく振る舞うことでした。
アルバイトは約1年間継続しました。
終える頃には、わずかながらホテルマンとして働くことにやりがいを感じるようになっていました。
まとめ
もしあなたが接客の仕事にかかわっているなら、あなたの発する言葉の端々に〈ありがたい〉という気持ちを込めるようにしてみてください。
これだけで顧客から見たあなたは、間違いなく愛想よく映るはずです。
気持ちのよい接客は、顧客の「自己重要感」を満たしてあげることにつながります。
必然的に、あなたは顧客から好かれる人間になります。
自然とコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
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